藤森建築と路上観察

藤森建築と路上観察 第10回ヴェネチア・ビエンナーレ建築展帰国展
2007.4.14-7.1 東京オペラシティアートギャラリー


私にとって藤森さんは赤瀬川原平路上観察学会でなじみが深い。ただ、原平ちゃんのニラハウスや自邸のタンポポハウス、TVでも特集が組まれた高過庵、養老昆虫館、そして最近できたねむの木学園の美術館など、手がけた建築もいくつか目にしたことがある。
今回の展覧会は、ベネチアビエンナーレ日本館の展示のいわば凱旋企画。タイトルにあるとおり、路上観察(トマソン含)も展示されていたということで、原平ファンはマスト!と思い足を運びました。


もともと建築史家だった藤森さんが自身で建築を手がけるようになった経緯は良く知らないが、既存の発想にとらわれないとても楽しい建物を手がけている。自然素材をふんだんに使った手作りの建築・・・と言うと、すっごい陳腐だなあ。何と言ったら良いんだろう、藤森さんは自分たちのことを「縄文建築団」と名乗っているので、そこからイメージしてもらえれば。
展示は大きく4つに分かれていた。最初の部屋は藤森建築の主な施工方法を紹介。いきなりマニアックな展示ですね(笑)。伐採用のごつい機械やナタなどの大工道具が展示された空間。屋根に植物を植える方法は、工法図も展示されていて、建築の学生さんか?熱心にメモを取る姿も。
次の部屋は藤森さんが今まで手がけた建築を写真パネルと模型で紹介。模型と言っても自分の建築を模して丸太から伐採用の機械で削りだして作ったオブジェ。どれも素朴でとてもかわいらしい。
3番目の部屋がいわばメイン会場。藤森建築の特徴である焼杉の壁に茶室のような小さな入口、入口の周りには金箔が貼られている。靴を脱いで入口をくぐって中に入り目に飛び込むのは、苔が一面に生えた何本もの大きな土塔、未来の日本の建築を予期した大きな模型、そして竹と縄で編んで作ったドーム。
自然にとけこみながらもちょっと見た事のない形、藤森さんの建築はどことなく宮崎駿の世界を彷彿とさせる印象だった。まあ数日前にラピュタを見てたり、直前に大時計を見たせいもあったんだろうけど。
藤森さんの大学時代の卒業制作も展示されていたのだが、時代(70年代)なんでしょうかねえ、絵のタッチがいかにもその後原平ちゃんとつながっていきそうな雰囲気で興味深かったです。
藤森さんが好きな建築物の写真も紹介されていた。ポルトガルの石の家がまるで童話にでも出てきそうなくらいとてつもなくかわいらしくてキューン!
そして気になる竹のドーム。ここも茶室みたいに入口が小さい。中に入るとなんと「路上観察学会の採集物件 1970-2006」いわば"路上観察名作集・ベネチアビエンナーレヴァージョン"が上映中。テーマごとに分けられた写真を画面に映しながら、学会の皆さんがツッコミ…いや解説を入れる音声が流れる。海外での上映らしく「富士山」なんてテーマも。さすがに見たことのある物件が多かったが、ツッコミを聞きながら見るのは楽しく、また、このドームの中に集う全員がトマソン好きだと思うとワクワクしました(笑)。
ドームの外ではベネチアビエンナーレの会場設営風景と路上観察ベネチア特別編も上映。縄文建築団みんなでベネチア行ったのね〜!
最後は路上観察学会の各メンバーと縄文建築団の紹介。路上観察の名作選も展示されていました。林丈二さんの考現学にうなる。ほんっっとうに意味のないことを仔細に調査し、結果意味のあることにしている。お見事!としか言いようがない。



ベネチアビエンナーレ時のパンフレットの復刻版は、縄がしばってあったり、焼杉壁のサンプルも入っていてなかなか心憎い。