2019.6.2(日)GUIRO『A MEZZANINE/あ・めっざにね』試聴会@喫茶クロカワ

2019.6.2(日)GUIRO『A MEZZANINE/あ・めっざにね』試聴会@喫茶クロカワ
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出演:GUIRO(高倉一修・厚海義朗・牧野容也)、松永良平


「森、道、市場」でのライブを終えたその夜。この日から先行販売された『A MEZZANINE』を聴きながら、みんなでこの作品についてのお話を聞きましょう、という会。自分を含めこの場所で初めて音源を聴いたひとがほとんどだったのでは。当事者といっしょに初聴きできるなんて、なんたる贅沢…。
話の内容は当日のメモから書き起こしていますが、言い回しや話のつながりなど、もしかしたら間違いもあるかも…「こういう雰囲気だったんだな」というくらいの気持ちで読んでいただければ幸いです。


プロローグ

音源を流すつもりのiPadとスピーカーをつなげようとしてなかなかうまくいかず…うまくいったと思ったら、スピーカーから鳴り響く「♪テリリン」の音(Apple製品使ってるとよく聴く音)。環境音、環境音…と客席のみんなも笑っていると、今度は「♪ピーン」。メールが届いたのでしょうか(笑)

そんなこんなで和やかな雰囲気から試聴会スタート。向かって左から順にGUIROに造詣の深い音楽ライターの松永良平さん、そしてGUIROのメンバー牧野くん、高倉さん、義朗くんと並び、まずは立って挨拶。松「ムードコーラスっぽいですね」
松永さん、今日の会場がクロカワということで、「普通に予約して行った」と、2015年にここクロカワで行われた、GUIROの再始動ライブの思い出話を。(松永さんの自伝的な日記連載にこの日のことが書かれています。)
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GUIROが3人になった

松「GUIROはメンバーが出戻りしてる、というか出戻りしかいないバンドということで、世界的にもあんまりないように思うんだけど、活動休止が2008年ですよね」
義「この人と距離取らなきゃなと思って」と高倉さんを見ながら(笑)
高「実は牧野くんには、活動休止中にごはんに誘ってもらったりで」
牧「僕は、実はそのときに高倉さんに人生相談してて。会社を辞めようか、とか」
高「辞めなさい、と(笑)」

松「再始動して、最初は高倉くんのソロプロジェクトという形だったけれど、2人が加入して3人でGUIROという形になったじゃないですか」
高「GUIROは普通のバンドじゃないんです。制作部から全部自分たちでやっているんですよね。町工場みたいな。こちらがお願いする人ではなく、支え合ってやる人がいると、もう少しうまくやれるのではと」
牧「僕は、入るなら正式メンバーで、と思ってたんですが、エレキギターが正式メンバーとして入るのはどうなのか?とも思ってて。でも、高倉さんに『やろうよ、ギターの可能性はまだまだある』と言われて、入ろうと。」
高「まっきーには事務的なことをやってもらっていますね」
牧「4割くらい。ブッキングとか。小鳥美術館でもやっているので違和感はないです。」
義「僕は何も変わらないですね。現場へ行ってベースを弾く。」
牧「音楽部門として、太い柱だな、と思います。」

高「アルバムできましたねー…ヤバかったです。森道で売り上げあげないと、運営がヤバい、と(笑)」
松「『三世紀』のイントロを聴いて、心からほっとしました。コケたらいやだなあ…って」
高「これはミックスの前日に歌詞が書きあがったんですよ…。これから聴いていただきますが、今回は配信も予定されていまして、本日はハイレゾ音源で。また、聴き比べてみてください。」


三世紀

義「未だに意味がわからない。ハーモニーとベースラインの関係性とか、ギリギリの状態でやってます。最初は全く形にならなかった」
高「そこがみんなの技、なんとかしてしまおうとする人たちしかいない」
松「愛情が大きいんですね」
高「この曲は、音楽やってる方ならご存知かもしれませんが、100パーセントGarageBand*1で作っています。『三世紀』というのは、紀元前三世紀、という方ではなく、三つの世紀を渡るという意味です」
牧「デモをもらったときに、バンドでできるのか?と思ったのが一番最初の印象ですね」
義「デモは歌も入ってなかった」
牧「高倉さんがその場で歌うのを逃さないようにiPhoneのボイスメモで録って(笑)」
高「ミックスは葛西敏彦さん。仕事がとにかくはやい人なんだ。『ABBAU』のとき、あだちくんと田中三一さんのところで最後ミックスをしたんだけど、実は最初は葛西さんにミックスをお願いをしていて、最終的にごめんなさい、ということがあって」
松「細野晴臣さんの『オムニ・サイト・シーイング』を思い出しました」


ノヴァ・エチカ

高「義朗くんが、ベースラインをこういう感じでやってみたいというのがまずあって。この曲を作るにあたってはいろいろありましたね。まず、ドラマーが変わった。もちろん努力はあったけど、最終的にそうなった…と。そして、ヴォーカルも変えようと。どう歌ったらいいのかわからなくて。さらに、キーも変えた。普通は年齢を重ねると低くて合わなくなるんだけど、僕の場合は声が高くなってしまって、低すぎて歌えない、と。なので、この曲をどうしてもやりたい、というよりはどちらかというと、この取り組みをなんとか形にしたい、という。思いつきコーラスも入れて…あだちくんがつきあってくれなかったらやれなかった」
松「この編成に合ったアレンジですよね」
牧「僕は『VU』の高倉さんの文章…あの文章がとても好きで、他の人にも結構読ませたりしたんですけど…を読んで、『エチカ』をいま、世に出す意味があるって思ったんですよね。世に出せてよかったです」
義「すみません、その文章、僕はまだ読んでないんですけど…」
高「読むな」(笑)
義「僕のベースラインのアイディアに、あだちくんと高倉さんが食いついてくれて。ceroの『街の報せ』という曲があるんですけど、あの曲のリズムの取り方を踏襲させてもらおうかと*2。みっちゃんのドラムはスクエアに、ベースはこういう感じでやればいいんじゃない?って。結局は、ご破算にしようかということになったんですけど」
高「あまりにできないので」
松「前の『エチカ』よりも歌の難易度が上がりましたよね。もしもGUIROカラオケがあったら、歌いたい歌筆頭だったのに」
義「みなさんの力でカラオケに入れてください」
松「そのときの映像はどうなるんでしょうね(笑)」


祝福の歌

義「これは2013年くらいに作った曲で、自分で歌に自信がない曲を提供してみたら、GUIROでやることになって。でも今までも、僕が作った曲を詞もアレンジも変えてということもありましたね*3
高「ごめんなさい。後悔してる(笑)。義朗くんがやりたいと言った曲はやるという感じで」
この曲は高倉さんがリズムアレンジ、上物は義朗くんという感じだったが、
高「2017年6月に合宿をしまして。そのときに僕が言う間もなく、あだちくんとかみんながいろいろやってたので、やってやってという感じで、今の形になった」
【2019.7.13補足】2019年7月11日に行われた東京・阿佐ヶ谷RojiGUIRO「A MEZZANINE(あ・めっざにね)」一般流通開始記念トークイベント《GUIRORojiの中二階》」へ行かれた方のお話によると、『祝福の歌』のアレンジは、このインタビュー記事ではあだちさんとなっているけれど、サックス部分以外は全て義朗くんがやっている、ということがずっと気になっていて、いつ言おうかと思っていたけど今回やっと伝えられた、と高倉さんがおっしゃっていたとのことでした。この試聴会のレポートもインタビューと同じようなニュアンスで読めなくもないので、ここに補足しておきますね。
(この曲のときだったか、牧野くんがエレキギターのセッティングについて話をしたような記憶があるけど、マニアックすぎる話でメモ取れませんでした~このギターにあえてこの弦を張って、みたいな話だった)


銀河

松「遂に、音源化ですね。俺が最初にライブでこの曲を見たときはインストでした」
義「最初、高倉さんが歌詞がぴんと来ないから外したいって」
高「昔の曲(義朗くんがSPEEDですか?とか口挟んできて、高倉さんが言わんでよし、みたいなくだりがあった)を持ってくること自体がぴんと来ない。歌詞も若い頃に書いてるんで恥ずかしいですよね…何が悲しいのかって内容で…青い感じが…」
義「俺は普通に好きだからぴんと来ない」
高「キーが低すぎて盛り上がりきれないのもあるんだよね…元々ツインボーカルの曲だし」
松「やっとレコーディングしたって感じですよ」
高「曲がないからね。あれを入れろ、とかあるんですけど、強いて言うと、これはやってみたい、と。今のメンバーだと放っておいてもノリの良い感じになってて楽しいです」
牧「これまで曲のノリを出すギターを弾いてこなかったので、バンド内のアンサンブルのギターの立ち位置というのを考えたりと、新しい箱を開けてもらった曲だな、と。楽しいー!って思ってます。」
松「この曲には名古屋勢が多く参加していますね」
高倉さんからともよちゃん、河合くん、長瀬くん、杉山くん、そして『祝福の歌』に参加したフルートの紘子ちゃんの紹介があり
松「レペゼン名古屋という感じですね」(笑)


東天紅

松「YMO『増殖』の『ジ・エンド・オブ・エイジア』感。ムードコーラス感もありますね」
高「松永さんは見たことがない思うけど、TRIOLLIという開店休業中の3人グループをやっていて、元々その3人のレパートリーだったんです。この曲の歌詞はモノポリーズのがあこさんに10年前にもらっていたんですが、いつかはと思いながら10年経ってしまって。があこさんがソロCDを出されたときに、レコ発ライブに出ることになりまして、この機会に曲をつけなきゃと思ったら、ぱぱっとできたんです。一人でやるのも…と思って、カタリカタリの河合くんと、そこにいる(当日試聴会に来てた)杉山くんを誘って。杉山くんはギターの名手だけど、ピアノをむりやりお願いして…*4
松「なんでこの曲がGUIROに移植されたの?」
高「曲が…ない」(笑)
松「『ハッシャバイ』の側面からこぼれ落ちてるものがある曲という印象です」
高「聴いてる人がつかみどころのない曲かと。この曲は西尾さんのピアノが絶対に活かせる、僕はとにかくあの人のピアノを聴いてほしいと思っていて。ところが、スチールギターまで西尾さんが弾いているんです…!僕はムード歌謡が大好きで…もうこれは、スチールギター坂本慎太郎さんに頭を下げてやってくださいってお願いするしかないかなと思っていたんですが(笑)、西尾さんが『僕、やってみようかな』って。言った3日後にはスチールギターを買ってた。そして、一週間後には弾けるようになってた(笑)*5
牧「スチールギターって難しいんですよ。体と楽器が仲良しじゃないと弾けない。録音、一発OKですよね?」
高「うん」
高「この曲は杉山くんがいろいろ関わってて。こことここをつなげたいんだけど、うまくいかない部分のつながるコードを考えてくれて。杉山コードって呼んでます(笑)。あと、男性コーラスの原型も、TRIOLLIのときに杉山くんがコーラスのラインをつけてくれましたね。ほか、名古屋勢の録音でお世話になったり」
松「厚海さんはこの曲については何かありますか?」
義「…いや~おもしろいなーって思って聞いてました…おもしろい話だな~。杉山くんすごいな~」


A MEZZANINE/あ・めっざにね

松「前作の『Album』が出たのが2007年で、12年ぶり、干支ひとまわりのリリースになります。ということは、次が出るのは12年後の2031年?メンバー2人はAIになってるかも(笑)」
高「そんなに先にならないようには出したいです(笑)。次の作品は2人(義朗、牧野)の曲もある、というものになるかな。過渡期的な」

高「今回のはバラバラな曲調だから、フルアルバムだと入れられない曲を集めた感じになりました。バラバラをまとめる言葉として『中二階(=MEZZANINE)』。1階でも2階でもないけどいい場所、みたいな。『A MEZZANINE』はラテン語。『エチカ』を収録するからラテン語で…ラテン語縛りで考えるのも面白いな、と」
松「1でも0でもないあいだ(間)。あと中腰。いちばん辛いけどいちばん面白いことができる感じ」
高「狭間のことばかり考えています」
松「あわい(間)、踊り場、GUIROは絶えずそういうことをやってるバンドってイメージです」


質問コーナー

Q:森、道、市場のライブを見ました。海辺でめっちゃ気持ちよかったです。ライブを聴いてたら、あらためて高倉さんの書く詞には海がよく登場することに気づいたんですが、何かあるのでしょうか
A:確かに…海のことしか歌っていない*6。僕は宮城で生まれて、住んでいたのは海の近くという場所でもなかったんですけど、生まれたときの原風景でしょうね。『アバウ』は生まれたところのことを歌ってますしね。
そういえば、今日の森道のライブで、「帆掛け船」と歌った時に(『あれかしの歌』ですね)、ちょうど海に帆掛け船が横切ったんです!

Q:今回の作品をレコードで出す予定はないんですか
A:作りたいんですけど、予算が…CDが売れたら…(笑)
『Album』をアナログ化してほしいという声もあるんですが、収録時間が長くて2枚じゃ入らないんですよね。(10インチの話をしていたので10インチ基準で考えての話だったかもしれないです)

Q:『三世紀』でポエトリーリーディングのようなアプローチがあって驚きました。今後もこういう流れの曲を作られるのでしょうか
A:曲を作る中で、語りを入れるというのはなんとなくあったけど、自分はやらないだろう、というのがあり…この曲は本当に締め切りぎりぎりまで作ってて、いよいよミックスに出さないと、という前日におかしくなって、語り部分を入れた。…だから、自分でも非常に意外、だったんです。今後このような曲があるかどうかは、曲が求めたらやる、という感じでしょうか…。

*1:Appleの初心者向け音楽制作ソフト

*2:ご存知の方も多いと思いますが、現在義朗くんベース&光永さんドラムでceroのリズム隊を担当

*3:はいからさんが通る』という曲が『風邪をひいたら』になりましたね

*4:このときは「高倉一修」名義のライブでした。まさか高倉さんおひとりで演るの?って思っていたので、この組み合わせで登場したときは驚いたのと同時に、大好きな人しかいない組み合わせに嬉しく思ったことを覚えています。この後各人の作った曲を持ち寄る形で3~4本くらいTRIOLLIを名乗ってライブをやりました

*5:ズビズバーのライブで鼻でスチールギターのまねごとをしていたので、てっきり弾ける方なんだと思っていたら、そんなびっくり仰天な逸話があったとは…天才か

*6:そんなこともないですw